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「ねぇ、他にはどんな俳句があるの?」
二人の笑いがようやく落ち着いた後、口を開いたのは怜であった。
笑ってテンションが上がったのか、暑さでだれていた時と比べると、とても生き生きとしている。
(これこそ怜です。
楽しんでくれてよかった)
と、その生き生きとした彼女の表情を眺めながら沖田は満足げにそう考えていた。
沖田は元々、怜の部屋に行こうと思っていたわけではない。
土方の部屋から豊玉発句集をこっそりと持ち去り、誰もいない所で見ようと思いその部屋を探している途中で、怜を発見したのだ。
まだ、夏になったばかりなのに、早くも暑さにやられている怜。
沖田なりに、怜が心配になり話しかけたのだが、ここまで元気になってくれれば、
(私も土方さんの部屋から豊玉発句集を盗んだかいはあったものです。
あ、いえ、盗んだわけじゃなく、土方さんが部屋にいなかったので、勝手に拝借したわけですが……。
決して盗んだわけでは……)
なぜか沖田は心の中で言い訳をしている。
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