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「ねぇ、総司。聞いてる?
他にどんな俳句があるのさ?」
「!」
怜の不満げな様子を滲ませた声が耳に入り沖田はようやく我に返る。
怜の方を見てみれば、彼女は唇を少し尖らせ、上目遣いに沖田を見ていて、それがいつもの怜じゃない気がして、沖田は不覚にもドキリとしてしまった。
「い、いえ、あのすみません。
ボーとしていました」
怜相手に胸をときめかせてしまった自分に沖田は自分自身を信じられない気持ちになってしまう。
沖田にとって彼女は自分の玩具であり、対等に闘える相手という認識しかなかったのだから……。
もしも怜本人がその事を知れば怒ると思うが……。
とりあえず沖田は、先程の気持ちを打ち消すようにテンション高くそう言った後、面白い句を探すため、豊玉発句集をパラパラと捲ったのであった。
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