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「じゃあそうするよ。
総司も僕のことは呼び捨てでいいから。
さん付けってなんかむず痒くて……」
と、怜は苦笑する。
「では、お言葉に甘えさせてもらいますね……怜」
嬉しそうだが、名前を言うときに、ちょっと恥ずかしそうにする沖田。
ーーおき……いや、総司ってシャイなのかーー
怜は勝手にそう解釈する。
「さあ、着替えたことですし面倒臭いですけど土方さんのとこにいきますか……」
そう言う沖田は本当に面倒臭そうだった。
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲
副長室前ーー
沖田はとある部屋の前に止まる。
「ここが副長室なんですよ」
沖田は“ここ”と部屋に指を差して丁寧に教えてくれた。
「ふ~ん」
さほど興味のないことなので適当に受け流す。
沖田は初めからそんな怜の反応をわかっていたらしい。
トントンと壁を叩いて、
「土方さ~ん♪沖田です。失礼しま~す!」
ガラリと返事を待たずに襖をあけた。
「……⁉……何これ…煙たい…ゴホッ……ゲホッ」
怜は耐えきれずに噎せてしまう。
土方の部屋は煙で真っ白だった。
あまりに煙が濃すぎて中がほとんど見えない。
沖田は慣れているのか涼しい顔をしていた。
「ま~た換気をしないで煙管(キセル)を吸っていたのですか」
はぁ、と小さなため息をついた沖田は中に入り、窓を開けて部屋の換気をする。
そのお陰で、ようやく煙が流れ、部屋の様子が確認できた。
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