怒る者、楽しむ者

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瞬時に、その笑い声は下にいる今自分が交渉……というか譲歩している相手のものだとわかった。 顔の紅潮の理由が、羞恥心から別のどす黒いモノへと変わる。 てめぇ……何がおかしい? くっく、と含み笑いを続けながら俺様を見上げたクソバエ。 「いや……失敬。貴様の言う、奪わない戦いとやらの理解不能さが可笑しくてな」 理解不能だ? ラリってんのかこいつ。 ただでさえてめぇは王子だろうが。 自国民とか、家族のこと。人一倍気にしなきゃじゃ―― 「そんな次元の話をしているのではない」 ……竜の話遮りやがってこんガキゃあ…… 「奪われるもの、私から奪えるものなど、もう何も残っていないと言っている。 家族、国、そして……命ですらも、な」
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