プロローグ:傷に気づいて傷ついた

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「私は神である」 ……目の前の物体が、いきなり何か言い始めた。 放課後の空き教室。 窓から差し込む、赤い日差し。 沈む太陽。カラスの鳴き声。チクタクと時を刻む、壁にかけられたアナログ時計。 良い子は帰る時間である。 反対にした椅子の背もたれに、だらしなくもたれかかった俺の正面。 その机の上に正座して、その『神』と名乗る物体は存在していた。 「……」 「……」 「…………」 「…………」 「私は神である」 「リピートすんな」 雰囲気を出そうとしたつもりか、目の前のその物体は何やら頭から白い大き目の布切れみたいなものを被っていた。 おかげさまで肩まですっぽりそれで隠れていて、声もごわごわ篭っている。 神というよりも完全にお化けだった。何がしたいんだお前。 「聞こえてないかと思って、もう一回」 「スルーさせろよ。何事もないかのように帰らせろよ。主張すんなよ」 不機嫌そうに、目の前の物体は鼻を鳴らした(ような気がした。布切れのせいで、実際には見えない)。 「あのね、これは私が授業が終わって目が覚めたときのことなんだけどさ」 「なにナチュラルに授業中は睡眠時間であるのを周知の事実かのように語ってんだお前」 「そんでね、その時私の身体に異変が起きたのよ」 「俺のことはスルーすんのね、お前」 「こうね、ふらっと。立ち上がろうとした瞬間ふらっときたのよ。これはね、私思ったね。神が私に降りてきたと。この頭に到来したスピリチュアル。神の降臨を感じたよね」 「それ低血圧な。完全にただの低血圧な。そんな崇高なものじゃなくて、お前の身体の失陥な」 「そう、思えば私は授業が始まる前、こんな退屈な時間速く終わってしまえば、と思っていた……。そうして神が私に舞い降りた瞬間、それは終わっていた……。事象を自由に操る神の力。末恐ろしい」 「うん。お前の思考回路が末恐ろしいのは十分にわかった」
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