おいで……

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 当時の家は1階の両端にリビングと和室(仏壇は置いてない仏間?)があり、その間に和室からみて右側に玄関、トイレ、左側に階段、浴室そして突き当たりがリビングの順で配置されていました。  リビングのドアの横にテレビがあった事と、ドアも和室の襖も開け放しにしていた為、テレビを見ていると和室も視界に入る。といった状態でした。  いつものように一人で留守番しながら、テレビを見ていた時のことです。  視界になにやら白い物が入りました。 「何だろう?」  不思議に思い目を向けると、和室の入口でゆらゆらと動く白い物が空中に浮いています。  よく見るとその白いものは女性の手でした。  顔や体が見えたわけでもないのですが(肘と手首の中間辺りから指先まで)、発光するかのように白いその手は、細くしなやかで、当然の様に「女の人の手がある!」と、思ったのです。  その手は、私に向かって、  おいで……おいで……  と、ゆっくりと手招きをしていました。  怖くなった私は、慌てて玄関から逃げ出しました。  リビングには、勝手口もあったし、よく出入りしていた大きな窓もあったのに……。   その部屋は、霊の通り道だったそうで、たまたま通りかかった霊がいたずらに手招きしたのだろうと後から聞きました。  あの時、手は襖のすぐそばで手招きしていて、私はその目の前の玄関から外に逃げ出した訳ですが、あれが悪意を持っていたら家から逃げ出すことが出来たのでしょうか?  その日を境に不思議な体験をするようになったのです。  数年後にその家から引っ越しました。  そして、今は親戚が住んでいるのですが、親戚はその部屋に違和感を覚え、住む前に業者の人に床下を調べてもらったそうです。  すると、そこにはミイラ化した白蛇の死体があったそうです。
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