中学校の階段

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 その日は珍しく早くお弁当を食べ終わり、いつもの場所へと向かいました。  非常扉が開いていても薄暗いその階段は、一番乗りの私たち以外誰もいないはずだったのですが……、まるで集合写真を撮るかのように影が2列に並んで座っているのです。  その中でも、前列の真ん中にいる子が悪意をむき出しにしている……  特別、何が出来るわけでもなく、ただ、稀にちょっと見えるだけ。の私にもその悪意はひしひしと伝わってきます。  ――おかっぱ頭の女の子。  黒い影なのに、さらに黒い眼がぎょろりとこちらをにらみつけるように見ていました。 「やばい!」  一緒に来ていた子と他のクラスに飛び込んで、影のことを話し、慌ててまた戻ると……その階段でふざけまわっている男子生徒がいました。 「そこ、幽霊がいるよ。やばいってぇ!!」  そんな事を言っていると、ちょっとした騒ぎになり、人が増えはじめ、騒ぎはどんどん大きくなり、生徒が階段に入りきらないほど集まってきました。  それと共に壁から天井から……影がどんどん集まり、屋上への階段に上っている生徒の体に、絡みつくようにまとわり付いているのがはっきりと見えたのです。 「体の中に入ろうとしている」 何故からは分からないのですが、そう思いました。 「そこにいたら、やばいって!」  と言ってみても、見えないんだから分かる訳がないんですが。  そういう私も、そこまで見えたのはこの時が初めてで、霊が沢山集まりすぎているせいか、本当に良く見えました。  そして、最初見えなかった友人も、突如泣き出し、「見えた」と呟いていました。  不思議な事に、怖いわけでも(いや、怖いんだけど)泣きたいわけでもないのに、自然と涙があふれてくるんです。  本当に不思議な体験でした。  そして、先生が現れ解散させられ、階段は静寂を取り戻しました。  教室に戻ると、生徒に絡みついたままの影の姿があったのですが、何か出来る訳もなく、ただ見ていただけでした。
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