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真夜中。ここはマンションの一室。電話のベルが響き渡る。
ここに住む男は酒の入ったグラスを置き受話器を取った。
「またお前か!?いったい何なんだ!!」
いくら怒鳴っても、受話器の向こうから声は聞こえず、ザーザーとしか聞こえてこない。
このイタズラ電話が始まったのはずいぶん前だ。正確になど覚えていない。
おかげで不眠症になってしまい、ストレスが溜まる一方だ。
しかし悪いことばかりではなかった。夜眠れない分、家での仕事がはかどった。おかげで地位も上がり、給料の方もイタズラ電話が始まる前に比べ倍になった。
男は考えた。
「金はある。よし、ここは一つイタズラ電話対策装置とでも銘打って発明しよう」と。
あわよくば儲けようとも考えた。
昼間は会社で仕事をし、夜は毎晩かかってくるイタズラ電話を聞き流し、それ対策の装置作りにはげんだ。
電話を分解したり、改造したりを繰り返した。
知識など全くない状態で始めたものだから、発明には数年を費やしたものの、なんとか完成した。
しかしいつの間にかイタズラ電話も止み、不眠症も治っていた。
それはよかったのだが、男は発明に没頭しすぎたため仕事を辞め、金もなくなり始めていた。
だがこの男、焦らなかった。
電話について研究しているうちに、とんでもない発明をした。それは『過去に繋がる電話』を作ったのだ。
つまりは、過去の者と会話ができるのだ。
歴史の裏側がわかるかもしれない、今は亡き人と話せるかもしれない。儲かることは確かだ。
まず始めに、実験にと過去の自分へと電話した。しかしザーザーとしか聞こえない。
さらに数年の月日で時差がうまれ電話先での時間帯は真夜中。
イタズラ電話としかいいようがない。
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