悪戯TEL

2/2
70人が本棚に入れています
本棚に追加
/48ページ
真夜中。ここはマンションの一室。電話のベルが響き渡る。   ここに住む男は酒の入ったグラスを置き受話器を取った。   「またお前か!?いったい何なんだ!!」   いくら怒鳴っても、受話器の向こうから声は聞こえず、ザーザーとしか聞こえてこない。   このイタズラ電話が始まったのはずいぶん前だ。正確になど覚えていない。   おかげで不眠症になってしまい、ストレスが溜まる一方だ。   しかし悪いことばかりではなかった。夜眠れない分、家での仕事がはかどった。おかげで地位も上がり、給料の方もイタズラ電話が始まる前に比べ倍になった。   男は考えた。 「金はある。よし、ここは一つイタズラ電話対策装置とでも銘打って発明しよう」と。 あわよくば儲けようとも考えた。   昼間は会社で仕事をし、夜は毎晩かかってくるイタズラ電話を聞き流し、それ対策の装置作りにはげんだ。   電話を分解したり、改造したりを繰り返した。   知識など全くない状態で始めたものだから、発明には数年を費やしたものの、なんとか完成した。   しかしいつの間にかイタズラ電話も止み、不眠症も治っていた。   それはよかったのだが、男は発明に没頭しすぎたため仕事を辞め、金もなくなり始めていた。   だがこの男、焦らなかった。   電話について研究しているうちに、とんでもない発明をした。それは『過去に繋がる電話』を作ったのだ。 つまりは、過去の者と会話ができるのだ。   歴史の裏側がわかるかもしれない、今は亡き人と話せるかもしれない。儲かることは確かだ。   まず始めに、実験にと過去の自分へと電話した。しかしザーザーとしか聞こえない。 さらに数年の月日で時差がうまれ電話先での時間帯は真夜中。 イタズラ電話としかいいようがない。
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!