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法律ではない、マナーである。
マナー革命が起きたあの日から生活が変わった。
とある僕の一日は右目のウインクで始まる。太陽へのマナーである。
その後服を着替える。パジャマを脱ぐときは東を向き、服を着るときはガラスに水を入れてから。全てマナーである。
朝食。食卓でもマナーに従う。箸を持つ前に三礼、持った後に三回まばたき。
「さぁ!」と父親特有のマナーである声が聞こえ、朝からのマナーを終えた父が席に座る。
その時僕はマナー違反に気付いた。注意する前のマナー、右足で円を描いてから父に言った。
「父さん、席に座る前に咳を一つしなかったよ」
マナー違反を注意された者のマナー、上を見上げてから父は言った。
「息子よ、今日は31日だから席に座る前は何もしなくていいのだよ。さては、咳を一つしたな?」
「そうだった…。わかったよ」
僕はマナー違反をした者のマナー、コインを落とし太陽呪文を唱えて父に謝罪した。
しかしその時、また僕は気付いた。今度は確信もある。またも右足で円を描いて注意した。
「父さん、謝罪された時のマナー、手の甲を見せ左右に振るをしなかったよ」
「そうだったな。しかしお前も太陽呪文を間違えていたぞ。正しくは…」
その後も何回も注意しあう。
このように朝が、……いや、……
マナーが厳しすぎる。
おかげで『朝』の段階で一日が終わってしまう。すでに時計は夜11時をさしている。
一日に何回右足で円を描くことか。
こう思いながら、僕は寝る前のマナー、左目のウインクをしてベットに入った。
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