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世界が回転し、背中から打ち付けられる。呼吸が止まり、肺から血の匂いがこみ上げてきた。
「……おま、え、柔道、もやってた、のか」
「何言ってんだよ。篠だって授業でやらなかったか?」
つまり、授業を受ければあれだけ見事に投げられると、そういうことか。無理に決まってんだろ。
さすが、格闘センスの塊みたいなやつだ。
「どうだ? 負けを認めるか?」
「得意げにしてるとこ悪いが、パンツが丸見えだ」
「いいよ別に、パンツじゃなくてスパッツだから」
「いや、むしろそれが良いという人もいるかも」
そこで不意打ち気味に立ち上がって再び緋奈に掴みかかる。
「甘いっ!」
今度は背負い投げだった。
なんだか、空がやけに遠く感じるな。
二度目は不思議とあまり痛みを感じなかった。投げられると分かっていたからか?
「おいおい篠、そんなにあたしのスカートの中が見たいのか? わざと投げられてまで」
嫌みか、この野郎。
「バレちまったか。この角度だとよく見えるぞ」
悔しいから、そう言い返してみた。
「そんな事しなくても、篠があたしの物になってくれれば、胸だって触らせてやるのに」
「バカめ。それじゃあつまらないんだよ! 無理矢理見て、触るのが男のロマン!」
あ、ここまで言ったらただの変態だな。
「そ。そりゃ残念」
「油断っ!」
三度目の正直!
――今度は大内刈りだった。いや、違う。倒した勢いそのままに、緋奈が上にのしかかってきた。俺がやろうとしたことをやり返された!
「もう、諦めなって。あたしが言うのもなんだけど、別にあたし悪くないだろ? 篠だって嫌いじゃないんだろ?」
その時、緋奈の目がバーサーカーの目から、恋する乙女の目になった。
「……まあ、そうだけど」
「だったら良いじゃん。あたし尽くすタイプだぜ?」
さりげなく胸を押しつけてきた。こいつ、お色気担当のポジションでも狙ってんのか?
「……そうだけど、やっぱダメだ」
緋奈は間違いなく油断していた。そうでなければ、素早く動いて上下を入れ替えるなんて真似、緋奈が許すはずがない。
「しまっ……!」
「俺はなぁ、小さい胸の方が好きなんだよ!」
今度こそ羽交い締めにすることに成功した。
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