第一章・発生

19/19
前へ
/58ページ
次へ
-6/27 AM/9:17・藤原宅- 「ふわぁ…ん~…」 あくびをしながら起き上がる藤原。藤原はある異変に気づく。 「あれ? なんで誰も居ないのさ…?」 藤原は家の中を見回したが、祖母を含めて誰も家に居ない。 「おかしいな……」 藤原はテーブルに置かれた紙を手に取った。 「これはお昼代です。学校から帰ったら食べるように………。学校!?」 藤原は時計を見た。短針がすでに9を指している。長針ももう4の場所まできていた。 「遅刻じゃないか!」 1人自分に突っ込む藤原であった。 -同時刻・愛知県名古屋市- 「なぁ。 あれって何だと思う?」 「分からんけど気味悪いな」 2人の男女の視線の先には、怪しい動きをする男の姿があった。 「動きがゾンビみたいで気持ち悪いわぁ」 そう、すでに感染者が岐阜のお隣である愛知県にまで来ていたのだ。 もちろん、市民たちはそんなことなど知らない。少しばかり地震の被害と小さな津波がやってきたぐらいで、大きな被害にはならなかった。 「え?あれって血…だよな?」 「これって救急車呼んだ方がいいよな?」 男が携帯電話を取り出し、119を押した。 「あ、もしもし? 名古屋駅の南側に救急車お願いします」 男はそう言いながら、血を流している男の様子を詳しく見るために近づいた。 近寄るのを躊躇っていた女があることに気づいた。 まだ血が出ているはずなのに、地面の血はすでに固まっているのだ。 人間の血液はそうすぐには固まらないものだ。 「拓!近寄っちゃだめよ!」 女は男の名を呼んだ。しかし、すでに手遅れだった。 人間の近づく気配を察したかのように、血を流している男が拓と呼ばれた男の方へ向き直る。 そして…大きな口を開けながら男に噛みついた。
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

93人が本棚に入れています
本棚に追加