第二章・感染拡大

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「た、拓っ!」 女性は男の名を叫んだ。だがしかし、その声はもう男には届かなかった。 「だ、誰か助けてっ!」 女性は殺人者からの逃亡を始めた。殺人者は男の死体を貪っている。 「た…たく……うっ…」 女性の目から涙がこぼれ落ち、嗚咽が聞こえはじめる。 「なんで…どうして……」 男が殺されてから1分が経ち、交番勤務の警察官が2人駆けつけた。 「動くなっ!」 「両手を頭の後ろで組め!」 「貴様!聞いているのか!」 警察官が構えていたニューナンブを威嚇射撃のつもりで1発撃った。 しかし、殺人者は微動だにせず、ただ死体を貪っているだけだった。 「こ…この悪魔っ!」 女性…真田彩香は警官から拳銃を奪い取ると、10m以上離れた場所からその引き金を引いた。 小柄で、尚且つ訓練も何もしていない彼女が、10m以上も離れた場所から弾丸を命中させるのは困難だった。 先ほど警官が放った1発を除いた残りの5発のうち、彼女は1発を見事心臓付近に命中させた。 しかしそれでも、殺人者は倒れもしなかった。 「どうなってるんだ!?」 もう1人の警官は心底驚いたようで、バイクに飛び乗って逃げ出してしまった。
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