第二章・感染拡大

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「素麺でいい?」 「別にいいよ」 「じゃあ決まり」 藤原の母が台所へ行き、大きな鍋に水を注ぎ、火を点けた。 3分ほどして水が沸騰すると、素麺の束を適当に2、3束掴んで鍋に入れた。 「ちょっと待っててや」 「はいよ」 藤原は本棚から漫画を取り出して読み始めた。 「やっぱりレナ最高だわ。 可愛いし優しいし面白いし」 「ひくらしはもういいから。 他に漫画ないの?」 「黒執事っていうのは面白いって聞いたけど…給料日明日なんだな…」 「ふーん。 お金貯めときや」 素麺が茹で上がったのでテーブルの前に座る藤原。母がテレビのスイッチを押した。 「再度申し上げます。 この度、大阪府内に治安維持法が発令されました。 住民の皆さんは連絡があるまで自宅で待機していてください」 テレビの臨時ニュースを見て呆然とする藤原母子。 ピリリリリリ 藤原の携帯に着信が入った。サブディスプレイには友の名が表示されていた。 「もしもし?」 「なぁフッジー、ニュース観たか? 治安維持法だってさ!」 「あぁ、観たさ。 外出禁止なんだってな」 「そんなの気にしてないよな? 俺たちはやらなきゃいけないことがあるんだからよ」 「もちろんさ」 電話の相手は翔だった。 「そういえばバイトは?」 当たり前のことが頭に浮かんだようだ。 「今日は帰らせてくれた。 今から準備して例の場所に来てくれへんか?」 「分かった。 じゃあすぐ行くわ」
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