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「な、なんだあれは!?」
突然無線の向こうから大きな声が聞こえてきた。
「蜘蛛だ!でかい蜘蛛がでやがった!」
「撃て!撃てぇっ!」
その後は断続的にアサルトライフルの銃声が聞こえ、やがて銃声は途絶えた。
「どうなったんだ?」
「おい!応答しろ!」
「……ザー…ザザ…」
それからは雑音しか聞こえなくなった。隊員たちの中に恐怖心が芽生えるが、それでも天下の海兵隊だという自信と誇りが、恐怖心を少しずつ和らげる。
「何が起こったか分からないままだ」
「そうだな。おい、第1大隊、応答せよ。第1大隊、応答せよ!」
応答を求めるが、第1大隊からの無線連絡は途絶えてしまった。
-7/2 06:30・名古屋市街地-
「お前はあそこを調べろ。私はこちらを調べる」
隊員が頷くと、アルバート中佐は1人地下鉄構内へ足を踏み入れた。
そこはすでに異界だった。そこかしこに死体があり、彼は吐き気を感じた。
「落ち着くんだ。私は海兵隊の中佐、アルバート・スタン。
あんな死体になってたまるか」
彼は深呼吸し、ホルスターからベレッタを抜いた。闇の中から視線を感じる。そして敵意も…。
まるで早く出ていけと言わんばかりに投げつけてくる視線、そして敵意。
アルバート中佐は少し後悔した。明らかに闇の中の気配は多い。
その数はおそらく、アルバート中佐1人で何とかなるようなものではないだろう。
「ちっ…ここは一旦下がるか」
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