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千賀代の顔にいつもの笑顔はなく、真剣な表情だった。
澱んだ空気が流れる。
小学生の和広でも、それは肌で感じ取れた。
『カズ…今日はねカズに話しておかなきゃいけない事があるんだけど、聞いてくれる?』
『う、うん…』
不安そうな返事をする和広。
千賀代は続ける。
『ちぃちゃんね…、暫くカズ達に会えなくなるの。』
和広の中で一瞬時間が止まる。
『え…?何で…?』
更に千賀代は続ける。
『先月、健康診断受けた時、悪いところがありますって、お医者さんに言われちゃって、入院しなきゃいけなくなっちゃったの。だから…』
唖然とする和広ーー。
『でも、大丈夫だから心配しなくていいよ。すぐに治るから!そしたらカズにまた会いに行くからね。』
和広は俯いて無言のままだった。
『どうしたの?カズ…』
和広には嫌な予感がしていた。
“ちぃちゃんにはもしかしたらもう二度と会えなくなるのではないか?”と……。
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