雨と桃色の傘

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「今日寒いし、そのままだと体冷えちゃうと思うから…」 女の子は、自分が着ているパーカーを指差した。 「べッッ…ベベベベ別に、大した事ないよ!? 気にしないで。それに、見ず知らずの人間に、いきなり服なんか貸さない方が…いいよ…」 あまりの慌てっぷりに、女の子が目を丸くする。 そして優しく微笑んだ。 「なんか、私の方が怪しまれてるかな? なんでだろ…普段なら、知らない人に声なんて掛けないのに。 あなたは、歳も近そうだったし。私、ここから家も近いんだ、だから遠慮しないで」 ベンチに荷物を置き、さっとパーカーを脱いだ。 「はい。安いやつだから、あんまり暖かくはないかもしれないけど、裸よりはマシだと思うから」
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