雨と桃色の傘

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「名前、教えて? 僕の名前は、悠っていうんだけど」 女の子が首を縦に振る。 「私は、幸。さちだよ。 よろしくね、悠くん」 幸が右手を差し出した。 初めての握手。 こんなに小さくて柔らかくて、温かい…。 博士の掌とも、また違った感覚。 またね、と幸は傘を広げ、手を振りながら歩きだした。 悠も手を振りながら、幸の姿が見えなくなるまで、見送った。 左手に右手を重ねて、心臓に当ててみた。 いつの間にか、雨は小降りになり、空には薄く虹が架かっていた。
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