+凡人+

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    「いっち!にいー、さんっ、しー!」  グラウンドに居る生徒は大きく声を挙げ準備体操をしている。 その声も大分離れた大きな木の所に行き着くまでには酷く小さくなる。 その大きな影の中に一人、授業中だと言うのに、堂々と横に寝ている少年が一人── 彼の名は、小神翔太(おがみしょうた)  彼がこの大きな木の下で授業をサボっているのにはちゃんとした理由がある。  今の時間。彼のクラスで実施されている授業は、能力開発であり、翔太本人は、超能力と言われる物を“全くもっていない”のだ。  入学当初は、どの様な能力者になれるか、彼本人も期待に胸を膨らます時期があった。 しかし、一ヶ月たち、二ヶ月……三ヶ月──気が付くとすでに半年経っており、当の本人である小神翔太は超能力者になることに諦めていた。 「高校の必須科目が超能力って……世の中鬼だよなぁ……」 入学当初の自分を思いだし、そう呟くと掲げた手を力無く地面へとおろした。  時折吹く風により、平均的な男子よりも長く伸ばした髪はなびき、中性的な顔が露わになる。 本人も気にしているのだろう……翔太は手で、なびく前髪を自分の顔を隠すように押さえた。
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