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街の所々に煙が登り、残骸が無造作に散らばっている。
モノも、そして人も。
現政府軍との戦いの果て、それがこの目を瞑りたくなるような惨状だ。
「……お前たちは逃げろ。この戦いは、俺たちの、負けだ」
後ろに控える、傷だらけの仲間たちに言葉を捻り出すように言う。
苦渋の決断だった。
先にも言った通り、彼らは敗戦の一歩手前で踏みとどまっている状態。
敗戦の将である自分が命を賭し、最期まで抗わなければならない。
そう、覚悟はしていた。
しかし、実際にこうなってみれば、
自分のものでないように手は震える。
声も、足も
人間はやはり弱い。
今なら素直に認めることが出来た。
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