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「セントさん、貴方は……?」
若い仲間の一人が彼ーセント=アザードーに聞く。
返ってくるだろう答えは分かっていた。
けれども、信じたくなかった。
否定して欲しかった。
いや、認めたくなかった。
自分たちが負けることに。
尊敬している人物がこれから死にいくことに。
「俺は、これからケジメをつけに行く。降伏した所で止まる奴らとは思えないからな」
セントは肩をすくめ、おどけてみせる。
それはこの状況下には相応しくない態度。
「それなら、俺も……いや俺たちも一緒に!」
ここまで戦ってきた仲間として、心から出た言葉だった。
しかし、
「ダメだ。ついてくるな、生きろ。……これが最後の命令だ」
そう言って寂しそうに笑った。
「……」
誰も喋らない。
喋れない。
涙を流す者もいた。
セントは続ける。
「ルセリア、いるか?」
「……ええ、ここに」
彼女の名はルセリア=アザード。
セントの妻であり、戦いにおいては信頼できるパートナーでもあった。
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