第三章

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  * * * 朝とも言えない夜明けの世界。 鳥たちは早くも囀り合い、人間たちは未だまどろみ彷徨う。 光も十分に届かない薄暗い森の中、見慣れぬ人間たちが歩いていた。 景色に溶け込むことのない、純白のローブに身を包んでいる。 数は二人。 そのどちらも他の術者とは一線を画する雰囲気を纏っている。 「まさかこんな僻地に来ることになるとはな……。 こんなところに本当に“無涯”はいるのか?」 「シュリさんが言ってましたから間違いないでしょう。 もう少しですから、先を急ぎましょう」 ザッザッザと地面を踏みしめ歩き出す。 「ミル」 「えぇ、……誰かさんに見られてるわね」 「“無涯”か?」 二人は立ち止まり周囲の気配を探ろうとした。 ――が、  
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