第三章

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  「異名持ちが二人、わざわざご苦労なこと。 しかし、人を訪ねるには早すぎ」 「すみません、あまり時間が無いもので」 そこは彼女たちも思うところがあったのか、苦笑して答える。 「ミル、呑気におしゃべりしてる場合じゃねぇぞ」 先ほどまで完全に空気と化してみせたカシスが後ろから口をはさんできた。 「そうでしたね。それで、“無涯”には会わせていただけますか?」 黒は答えずに身を翻し、ゆっくりと森の奥へと歩き出そうとしていた。 「おい!」 「会いたいなら、黙ってついてこい。 もしくは、消えろ」 ちらりとこちらに顔を向けてカシスに応え、また歩きだした。 「ったく、やっぱり俺アイツ駄目だ」 「知らないわよ、そんなの。 置いていきますよー?」 すでに少し先へ歩いていったミルをカシスは追いかけた。  
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