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「またそんな恰好して……。表が騒がしいけど、誰か来たの?
イェル?」
「なんだ? ミスト姉、呼んだか?」
その声に振り向くとイェルが寝間着のまま、後ろに立ちこちらを見ている。
「……そういうことにしたい訳ね。分かったわ」
「なんのことだか」
イェルは自身が言った言葉通り、涼しい顔で椅子に座った。
「そうね。……それで、こんな時間にお客様?」
また黒に向きなおり、再び問うた。
「“無涯”に、お客様」
己の異名を耳にし、その端正な顔は僅かに曇った。
それは注意していなければ分からないほど一瞬で、
しかし彼女にとっては珍しく弱い顔をしていた。
「どうするんだ? 帰ってもらうか?」
「……いいえ、イェルじゃなくて、んー何て呼べばいいかな?」
気遣う言葉をかけてくれたイェルに首を振って、黒の方に顔を向けた。
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