第三章

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  「そう、じゃあ元気でね? くれぐれも! 私に心配はかけさせないでね」 「わーってますよ。……じゃあ、行ってくるよ、ミスト姉さんも元気で」 荷物を手に、学園へと転移する準備を始める。 そして、それを目を細めて柔らかい表情で見つめているミスト。 まるで、出来の悪い子を見送る優しい親の顔であった。 「えぇ、楽しんできて。それでもっと成長した貴方を見せてね」 「なんだか変な気分だな……。転移」 瞬間、部屋の中を一閃の光が辺りを照らし、眩しくてミストは反射的に目を閉じた。 転移の間際、ミストの聞き間違いでなければ、イェルは姉と呼ぶ人に対し一言呟いた。 ただ一言純粋に、「ありがとう」と。 温かい何かに満たされたような、久しぶりに心地良いと感じたミストが目を開くと、 やれやれといった少し呆れた、けれども微笑んだ表情に変わり宙を見つめた。  
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