淡い色の悲恋

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「だから…今日は雑誌の撮影だろ?終わったら食事いかない?っって言ったんだよ」 しょ…くじ? 私はつい固まってしまった。 今まで流れで二人で食事をとったことはあったが、誘われたのは初めてだ。 「…行きたくねぇの?」 「いや!!!!!!行きます!!!是非!!!」 すごい剣幕で答えた私に、織人は必死に笑いをこらえていた。 撮影が始まると、織人は別人になる。 落ちついているがちょっと口の悪い織人が。 カメラに向って挑発的に誘ったり優しく笑いかけたり。 いつもいつも、新しい表情を私たちに見せてくれる。 出会った頃とはまた違う、新しい表情を―――。 「瀬戸さん…だっけ?あんたには負けたよ。俺…やってみよっかな芸能人てやつ。」 「ほ…ほんと!?」 織人からその返事をもらえた時はすごく嬉しくて。 私は早速後日先輩のコネで大手の芸能プロダクションに織人を連れていった。 もちろん、結果は社長大喜びでOK。 その、プロダクションの帰りの時だった。 バスを待ってる最中に、織人がぽつんと言った。 「俺…瀬戸さんに会えて良かったな…。」 「…え??」 「俺…あんたのために頂点に上るよ。そしたら…俺と付き合ってくれる?」 「―――え?」 ドキッとして、一瞬何を言われたか理解できなかった。 「織人それ…どういう…」 聞きたかったのに、タイミング悪くバスが来てしまって。 結局真意は聞けなかった。 でも、あの時の織人の顔はよく覚えている。 キレイで、それでいて少し恥ずかしそうで。 目は真っ直ぐに私を見ていた。 私はあの表情を見て、織人に恋をした。 そしてマネージャーになって織人のをもっと知るにつれて、その恋心は大きさを増した。 …今となっては、あの織人の言葉が本心だったとは思っていない。 織人はあれ以来そういう話しを出さないし。 日本一の芸能人になった今でも私は何も言われてないから。 ……この片思いは…早く消さなくてはいけない気持ちだ。 私は織人の、マネージャーなんだから。
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