淡い色の悲恋

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「はい、OKでーす」 声がかかり、織人が私の元に戻ってくる。 「瀬戸さん、水~!!」 常夏の海の撮影で、織人は暑そうに手をパタパタしていた。 「はいはい。」 私は織人に汗を拭くタオルを渡しカバンから水を取り出す。 「続けてインタビューね、これは室内だし、あと一踏ん張り!」 「今日はこれで終わりか。おいしい店調べといて。瀬戸さんの好みでいいから。」 ふっと笑い、織人は目を細めた。 インタビューもなんなくこなし、ついに食事。 言われた通り店を調べ、そこへ向う。 でも私が選んだ店は織人の大好きなステーキのお店だった。 「瀬戸さんの好みで良いって言ったのに。」 「今日は織人も頑張ってたし、野菜派の私でもたまにお肉が食べたいのよ!」 私が笑うと、織人は何倍もの笑顔で「そっか」と笑った。 「瀬戸さんて…俺を最初に見た時どう思った?」 ステーキを食べながら、唐突に織人は私に尋ねた。 私は少し考えてから口を開く。 「んー…そうね…見つけたって、思ったかな。」 「見つけた?」 「うん。ずっと、私が捜し求めていた人。私は華やかな…それでいて苦しい世界の中で頑張る芸能人の手伝いをしたいと思ってこの世界に入ったの。でも…私がお手伝いしたいと思える芸能人が今はいなかったから。」 織人は頷いて。 「手伝いたいと思える人って・…?」 「うん、輝きがあるの、とにかくね。人々を魅了する輝きを持っていて、ずっと、たくさんの人々をときめかせてくれるような…そして…強い意思を持ってる…。」 「それが、俺?」 織人はひどく驚いた顔をした。 自分のことなのに。 自分がどれほどスゴイ人かをわかっていない。 それがまた織人の良いところだろう。
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