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冬の寒い日の朝。
拓に出会ったのはその日。
平凡で何の取り柄もない私がまさか拓とつき合えるなんてちっとも思ってなかった。
その日の光景は、今もこの瞳に焼き付いている。
「ねぇ、友ちゃん。このコーヒー飲んで良い?」
広い広いリビングで、幸絵が私に聞く。
「うん、どうぞ。私がいれようか?」
「ううん、良いよ。友ちゃんも飲む?」
「うん、ありがとう!」
東京に来て三ヶ月。
一番に友達になったのが向かいのアパートに住む幸絵だった。
長い髪がとてもキレイで、さっぱりした付き合いやすい子。
一緒に差しだしながら。
幸絵が部屋を見渡す。
「ん~、本当だよね。掃除大変で。」
くすくすと笑い、二人でコーヒーを口にする。
コーヒーカップを置くと、幸絵はスズの頭をなでた。
スズは拓の犬で、ミニチュアダックスフンドの3歳。
遊びたいさかりで誰にでもなつくかわいい子。
幸絵の手をペロペロ舐め、長い尻尾をちぎれんばかりに揺らしていた。
「拓さん、仕事忙しいみたいだね、相変わらず。」
「うん。まぁ…人気歌手でもあり俳優でもあるわけだし…仕方ないでしょ」
私の苦笑を見て、幸絵は私の頭もスズにするみたく撫でるる。
「何歳違うんだっけ?」
「7歳。」
「拓さんが25歳だから…18歳?」
幸絵の目がまん丸くなって私はコーヒーを吹き出しそうになった。
「嘘でしょ~!?見えないわよ!!」
「失礼ね~」
私がふくれたので幸絵がコホンと咳払いをした。
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