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「もうすぐだ……もうすぐ完成する……」
目の前の巨大モニターに映し出されたいくつもの数式や暗号を見つめながら、一人の男はそう口にした。
そして、先程から絶え間なくキーボードを打ち続けている手を止めて後ろへ顔を向ける。
そこにそびえているのは、立てかけられるように設置された二つの青いカプセル。大きさは丁度、人が一人入るくらいだ。
「待ってろ。もうすぐ、そのカプセルから出られるからな」
男は再び口を開くと、今度は手元のキーボードへと視線を移動させ、自分の存在を強調させるかのように突き出た赤いボタンに指をかける。
「よし。解凍コード……起動」
ボタンを押すと、男とも女とも区別できないような機械音声が流れてきた。
《解凍コード、オメガ001及び002。起動します》
機械音声が終わり、後ろのカプセルが重量のある重々しい音をたてながら、開き始める。
「…………聞こえるか? 私の子供達」
男は、カプセルの蓋が開ききるのを見届けた後、恐る恐る中の人物に声をかける。
返事はない。というより二人とも、まったく動く気配すら感じられない。
まさか失敗か……?
瞬間、不安と焦りに駆られる。
しかし、そんな不安も一瞬だった。
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