お役人とわたし

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     秀家のことだ。一人にしておいたら隣村まで遊びに行きかねない。  何といっても、つい今朝方、修験に化けた森田小伝治の笈(おい)に潜り込み、京まで同行しようとした前科があるのだ。  幸い、背負った森田があまりの重さに不審を抱いたところを、三左衛門が暴いて事なきをえた。  とにかく何をするか分からない男なのである。 「じゃ、うちの女房にでも世話させようか? いいかんじに年増だけど」 「そちの奥か。たしかに、気の置けぬ女であったな」 「ガサツもガサツだから、お殿さまの注文どおりだと思うよ。とりあえず黒田ちゃんよりは打たれ強いし」 「うむ」  そんなわけで、五右衛門はおふさを連れて母屋へ戻った。  女房のおかねに用向きを伝える。単純なおかねは、秀家さまからのご指名に大興奮である。へちゃけた鼻の穴を膨らませ、がに股をフガフガ言わせながら、洞穴へ向かった。  おふさのような美女が追いやられ、あんな化け物まがいのオカチメンコが秀家の側へ仕えることになるとは、計算外であった。人生とは不条理である。  おかねを見送ってから、五右衛門はおふさを伴い、再び壺屋へ向かう。手の空いたおふさには、寝込んだ黒田の世話をさせることにしたのだ。    
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