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「おじさん、よろしくね」
「よろしく頼む」
五右衛門への態度とは一変。おっさんは、九蔵へ深々と頭を下げた。
寝床と飯・雑費云々をだすのは五右衛門であるし、匿っているのがバレた場合に罰を受けるのも五右衛門である。
納得がいかないが、ゴネたところで活力の無駄でしかない。
ちんこに竹箸刺してカマほったろか、とおっさん武者を呪いながら、九蔵が秀家を担ぎ上げるのを待った。
「じゃ、ぼちぼち行こっか」
「待て」
腰を折ったおっさんを五右衛門は睨んだ。
「やっぱ嫌になった? おれはそれでも構わないけど」
「違うわ」
おっさんはギロリと五右衛門を睨み返してから、山の斜面を指した。
「じき仲間が追いついてくる。しばし待ってもらおう」
「仲間?」
「うむ。あと六人ほど世話になる」
悪びれずに言いやがったおっさんに頭突きをくれてやりたかったが、先ほどの飛び蹴りで相手は衰弱している。へたをうって失神させたら担いで帰らなければならない。
こんな臭いおっさんに密着するくらいなら、肥溜めで顔を洗ったほうがマシである。
五右衛門は殺意をこらえた。
「嬉しいね、旦那さま。たくさんいたほうが賑やかだもん」
破顔した九蔵の脳天に、五右衛門は渾身の手刀を叩き込んだ。
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