思慕。

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────────────── intersection ────────────── 彩度が低く見えて、 音が聞こえないのは、刻がストライキをおこしたからだ。 交差点の真ん中 記憶と、感情が入り乱れ どこにもない、 私だけが知る世界 そう‥‥‥ ここは夢 魂の堕ちる場所。 私はそこに佇む そして、何刻だかも分からない。 一体のドールが、目の前で車にひかれた 球体関節が ギシっと鳴って、 上半身と下半身に分かれると 派手にコンクリートへと激突した その光景に、私は 恐れと悲しさで いっぱいになった けれど、そんな私を見てドールは言ったのだ 『良いのです これで。 私は、やっと幸せになれた そもそもアナタとは価値観も思考も違うのです 涙は、どうぞ おしまい下さい それでも アナタが悲しむのなら、 それは私へ向けられた悲しみではなく、アナタ自身への同情なのです。』 そして、ドールの表情が消え ただの塊と化した 私は悲しくて仕方なかった 血液まで吹き出さんばかりに涙が出た ドールにか、ドールの言葉にか分からない ただ、ただ、この現実でない世界でおこった真実が、私を悲観して離さない ただ一つ分かるのは、ドールが 今どこへ行ったのか、私は知らないのだ‥‥‥‥ ──────────────
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