叙情詩

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さっきまでの優しい赤がボクの鼓動に合わせて窓ガラスを叩いていた。 … よく聞こえなかった。しかも、どういう意味だ…。 … 沈黙の中をピアノバラードが流れていた。 … 迂闊に喋れなかった。 沈黙はミクが壊した。 「ゴメン、大丈夫。旦那も知らない事だし…。ワタシ……、おろすから…」 オイ!ボクは何を言わしているんだ…。でも…。 「ミク、ちょっと待ってよ。それは……、ボクだよね。それならちょっと待ってよ。」 ミクは俯いたまま、頷いた。 ミクが旦那としていなければ、ボクなのは間違いない。頷いたということはそういう事だ。 言葉が難しい。ここで上手い言葉があるなら教えて欲しい。 産んでよ。っと言えば、家族を捨てる事になる。ゴメン。っと言えばミクはどうなる?確実に終わる…。 ボクには選ぶ責任がある。ボクは優柔不断なのか?でも、確実に大きな別れ道なのは確かだ。 しかし、またも、沈黙をやぶったのはミクだった。 「ゴメン。ワタシ面倒くさい女だね。大丈夫、アキトには迷惑かけないから…、ちゃんとおろすから…、心配ないから…、だから…、お願い…、側にいて…。別れないで…。」 ミクはボクの左肩を掴んで泣きながらも、夕暮れにまけない、優しい声でボクに言った。 「ミク、別れないよ……。大丈夫だよ。大好きだから……。」 別れない。上手くやる方法なんて思いつかない。ただ、別れるなんて事はない。 それでも…何も良い方法なんて思いつかなかった。 おろせば何もなく昨日と同じ生活が待っているのか? ボクの頭の中を色々な光景が駆けめぐっている。 ミクを包む夕暮れが、悪戯にボクの目に光を刺した。 「ミク、ゆっくり考えよう……、もちろん二人で居ることを前提に…逃げることも考えて・・・・・・。」
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