叙情詩

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僅かに残る赤と闇が混ざり、ボクらの形を隠してくれていた。 今すぐ、このまま……っという訳にはいかない。 もちろん、ミクの言うように、お互いの今までの全てを変える事になるから考えないといけない…、それに、お互いに抱えているものが荷物以外に沢山あった。 大人として、人として、それらをしっかり考えて、清算してから…。 それはお互いの提案であり、納得の意見だった。 考えと決意をきちんと決めて、一週間後までにすべての準備をしておく事、連絡はボクからすると約束して、ミクは車を降りた。 ボクはそのまま、車を走らせた。 音楽の音量を響く程に上げて…、いつもの海岸についた。 何を考えている訳ではない。ただ、もう二度と見る事のないかも知れない海を見ていた。 「もしもし…、アキトです。ねぇさん、オレ、女と逃げる事に決めた。」 「そう・・・。愛してるんだね・・・。お母さん、実家には・・・?大丈夫なの?」 「まだ、言ってないよ。・・・多分、勘当だろうけど・・・、跡取りじゃないから良いんじゃない?」 「でも・・・、ヒカルちゃんは・・・?」 ねぇさんに電話すると忙しいにもかかわらず対応をしてくれた。 この人に、また助けてもらわないといけない、実家の事、ヒカルの事・・・。問題は山積みだ。 一旦電話を切って・・・、あとの友達は…、適当にメールしとけばいい。 ボクはしばらく海を眺めてから、今後の事を考えながら家路についた。 「ただいま。」 「パパっ!おかえり~。」 ヒカルはいつもの笑顔で迎えてくれた。 こぼれそうになる涙を必死に笑顔で隠した。 「おかえり。ご飯、もう少しだから……。」 ヨウコの声がキッチンの方から聞こえた。最後の週末は楽しもう。 準備は月曜日からだ。 揺らぎそうな思いを妥協とミクへの想いで抑えつけた。 ミクは上手く話が出来るだろうか? 難しいなら、オレが頭を下げるから…とは、言ったが…。 先ずは自分か…。 冷たい秋風がボクを最後の家族の週末へ溶け込ませないようにしているようだった。
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