別れ

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彼が消えたことを確認して…その段階になってやっと頬をつたう、この涙の理由が解った気がした 私は…彼と一緒に居たかったんだ 彼ともっと話したかった 彼ともっと笑いたかった 彼ともっと歩きたかった 彼ともっと もっと…… そんな言葉が浮かんで消える 喜びを、怒りを、悲しみを教えてくれたものが居なくなる、この壮絶な喪失感が哀しいということか… この心こそ、人間を不必要なまでに模倣した心こそ彼が私にくれた一番の宝…… 私がそれに気づいてからは早かった 「こんな所にいたのか」 私が此処に残ってやれること 「うん?やつはログアウトしたのか?」 いや…私が彼にもらった心を持って、ここでやるべきこと 「こんな抜け穴があったとはな…」 それを理解し覚悟を決める 「まあいい、お前が死ねばこの事を知るものも、居なくなるのだからなぁ!」 涙を振り払い、すばやく振り向く そこにはもうすでに、渾身の一撃を叩き込むべく大きく飛び上がったカークが驚愕の表情を浮かべていた。 私の意外な素早さに驚いたのだろうか? それとも…出現スピードが段違いに速くなった、この弓矢を見て驚いているのだろうか? 覚悟を決めるというのは強力だ、体の底からこんなにも力が湧いてくる 私はありったけの力を込めて、矢を放った 間違いを正そう…彼がくれたこの心を持って そのために戦おう…心から生じたこの力を持って そしてこの世界を守ろう…心に宿ったこの強き意思を持って この町に生きる者達に慈悲を この町に生まれ落ちてしまった者たちに救いを そして願わくば…この悪夢の町に終焉を… 私は諦めない…絶対に…!
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