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私はリディア、AIの内の1人。
他のプレイヤーと同じような外見をした私は、1人座り込んでいた。
このプロジェクトの目的が<仮想内での日常の再現>であるから、家族で参加しているプレイヤーが多いのだうが・・・
私はそう思い、手近な報告場所へ向かおうと立ち上がった。その時
「・・・なぁ、あんたソロプレイヤーか?」
``話しかけられた!?''
プレイヤーは複数人で参加しているため、AIが話しかけられることは滅多に無い・・・
いきなりの展開に驚き
''えーーっと、確か対プレイヤー用のマニュアルは・・・あれ、どこだっけ!?``
少し混乱する。情報伝達さえうまくいかない。
とにかく何か返さないと、と思いとっさに
「は、はぃ!」
・・・答えてしまった・・・うまくかわせばいいものを・・・しかも最悪の流れだ・・・
「やっぱりそうか、そんなに驚かなくてもいいだろうよ。俺はレオンだ、あんたは?」
そういう流れになるか・・・心の中で溜め息をつく。
仕方ない、対応するしかないだろう。基本的にAIはプレイヤーが楽しく時間を過ごすために存在するのだから・・・
そう覚悟を決め、名乗り返す。
「あの、リディア・・・です」
「そうか、なら・・・リディア・・・・・・あ、あの、物は相談なんだが。い、一緒に街を回らないか?」
一瞬、理解が追いつかない。混乱が少し大きくなる。
レオンと名乗った青年は、自分の行為が随分恥ずかしいことであることに気づいたようで、とたんに饒舌になる。
「い、いや、変な意味じゃないんだ、ただこんな時期になると、1人でやることがなくてな。他は皆、家族かカップルだから入り込めないし。」
プレイヤーのためのAI、退屈しているのなら相手をしなければいけないだろう・・・元々この姿はそのためでもあるし。
私は心を決めた。
「・・・それでな、そこの料理がまた絶品で・・・」
「わかりました」
「そうか、しょうがないよな。まぁダメ元だったから気に・・・・は?」
「わかりました、と。街を回るんでしょう?」
「・・・そ、そうか、悪いな時間取らせて!」
こうして私とレオン君は出会った・・・この出会いが無ければ、あの最悪の事件は解決しなかっただろう。
そして・・・この後に過ごしたレオン君との日々は・・・本当に楽しかった・・・本当に。
しかし、この出会いのせいで、レオン君に大きな悲しみを味あわせてしまったことは
今でも・・・悔やんでいる。
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