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「手越…。手越!」
体を揺すり、必死に起こしているのは、加藤。
バーチャルの世界を少しひきづっている為、まだ気持ち的に手越の恋人なのだ。
「シゲ…。どこ?シゲ…。」
「手越!」
「シゲ?」
「ここだよ、手越…。」
「シゲ…。」
加藤のとなりのマシーンに入っていた手越は宙をみつめていたが、ようやく視点があってきた。
最初にその視点がとらえたのは加藤。
手越も同様にバーチャルの中の設定をひきづっていた。
「どこに行ったかと思った…。」
「俺はどこにも行かないから…。」
2人の様子を見ていた小山と山下。
「小山ぁ。大丈夫?手越もシゲも全然、気持ちが戻ってないけど…。」と山下。
「なんか…複雑…。このまま気持ちが元に戻らなかったら…どうしよう…。」
心配になった小山は、案内人に尋ねた。
「バーチャルから戻っても現実的に気持ちが戻らないってことって…あります?」
「たまに…いらっしゃいます。
その場合は元々、そういう素質があったり、どこかでそういう状態を望んでいたりするので、押さえていたものがなくなって解放されていくのだと思います。
決して酷い状態のままで戻ってくることはございません。
そういうものは戻ってくるときに排除し、修正するプログラムになっておりますので、ご安心ください。」
そんな…。
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