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「慶ちゃん…俺も、複雑。だんだん現実に戻ってることは戻ってるけど…。」
と手越は今にも泣きそうな顔で言った。
バーチャルから戻ったときは、自分の恋人はシゲだと思っていたが、現実に戻るにつれてようやく、自分の恋人は小山だと思い出した。
「手越…。実は俺もなんだ。ぐちゃぐちゃだよ、頭が…。」
「慶ちゃんも?」
「うん。ここに来てバーチャルマシーンに入るまでは、絶対的に手越を好きなはずなのに…。バーチャル行って戻ってきたら…、ぐちゃぐちゃだよ。おまえと一緒だ。」
「じゃあ、慶ちゃんは山下くんを?」
「うん…。もし……このまま……このままの状態なら…そのときは…」
「慶ちゃん!…全部言わないで。俺も同じだし…先のことは分からないから…。」
「…そうだな。…ごめん。」
手越に謝ると、山下と同じようにパフッとマシーンの椅子に倒れこんだ。
「不思議やな。あんなラブラブやった2人が、半日でこんなやもん。なんか怖いで。いろいろ…。機械も、ある意味、人間も…。」
錦戸がそう言うと、
「そうですね…。」とシゲが言った。
「僕だってびっくりですもん。まさか…至って普通だと思ってた僕が…手越のことが気になって仕方がないっていう…。
あ~!もう…なんでこんなことペラペラ喋るんだろ…。
でも…気になって仕方がないっていうより…むしろ…好きだっていう、この情況に頭が混乱してる…。
なんなんだろう?」
「まあ、それはホンマは手越のことが気になっててんて、現実のこの世界で。
せやから、たまたまそういう設定のバーチャルと重なって心に掛かっていた鍵が外れてんて。」
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