失われた力

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扉を閉め、簡易的な鍵をかけると教室の片隅にかたまり息を殺す。 月明かりに照らされる廊下にあの巨体の影が映り、涼達がいる教室の前を通って行く。涼は少しだけ震えている瑞樹の手を強く握りながら鬼が通り過ぎてくれるのを願った。 「…………………行った、のか?」 棍棒を引きずる音が遠ざかり、そして聞こえなくなったのを確認すると、涼は小さくそう呟くと深いため息をついた。 「ちょ、ちょっと。手を………」 「あ!あぁ悪い!」 「静かにせんか!そんなことよりこれからどうするかだろ」 瑞樹の手を声を上げながら慌てて離した涼にセイが小さな声で叱る。涼は「………悪い」と呟くを教室の中を改めて見渡す。 (家庭科室…………何か役に立ちそうな物……………包丁で戦えってか?) 自分の浅はかな思いつきに心の中で嘲笑を浮かべると改めて考え直す。 (くそっ!せめてある程度のダメージさえ与えられれば逃げれるのに………!) そう考えながら今の時間を確認するために涼はポケットに手を入れる。そこで涼はあることに気が付いた。
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