失われた力

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(そうか!これがあったんだ!) 何か思い立った涼は手あたり次第に教室の棚を開けてゆく。 その奇行を尻目にセイと瑞樹はそれぞれ現状の打開策を考えていると、涼の「あった!」という嬉しそうな声にそちらを振り向く。そこには笑顔で砂糖と小麦粉の大量の袋を抱いた涼がいた。 「はぁ………何をしてるのかと思えば、あんたふざけてるの?この状況でホットケーキでも作るつもり?」 隠しきれない怒気を放っている瑞樹は胸倉を掴まんする勢いで涼に詰め寄る。セイに至っては呆れて何も言えない様子。 「いいか?これは一度きりのチャンスだ。それに危険も大きい。でもあいつを倒すにはこれぐらいの方法しかない」 瑞樹の睨みをもろともせず涼はそう断言した。その本気の目に気押され、瑞樹は涼から一歩下がると涼の作戦を黙って聞いた。 「なるほどな。それなら奴を倒せるかもしれん」 「でも大丈夫なの?それって私達もかなり危険、というより下手したら死よ?」 「だけどこれ以外方法がないだろ?倒すまではいかなくても逃げることは出来るはずだ。猶予は3秒だけだけどな」 涼の言葉に瑞樹の覚悟を決めたのか、三人はすぐさま準備に取り掛かった。
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