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「よし、準備はこれぐらいだな。セイ頼む」
涼の合図でセイが廊下に出て鳴き声を上げる。廊下にこだまする鳴き声が消えゆくと、変わりに何かが廊下を擦る音が近づいてくる。急いで涼達は配置に付くと奴が教室に入ってくるのを待った。
徐々に近づいてくる床を擦る音、足音、荒い呼吸。
それら全てが涼達の心拍数を上げてゆく。開け放たれた教室の扉を息をするのも忘れて凝視していた涼の目に奴の足が映った。
「来たっ!」
小さくそう叫んだ涼は少しだけ足を曲げて動ける体制を取る。
そして奴は教室の入り口に手をかけながら頭を低くし、その巨体で部屋の中へと侵入してきた。追い詰めたと言わんばかりに鬼は目の前で肩を寄せ合っている三人を見下ろす。
鬼がゆっくりと三人に近づくために一歩前に踏み出したその時、涼が声を張り上げた。
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