失われた力

77/82
前へ
/191ページ
次へ
しばらくして車はある建物の前で止まると薫と彩音は何も言わずに降りる。 それに見習い、涼達も車から降りると二人の後を追って建物の中へと入っていった。 いかにも地味で古びたオフィスビルといった外観とは裏腹に、内装は一流企業のエントランスと見間違えるほどのものだった。 涼達は高い天井や壁を見上げながら驚嘆の声を上げていると、エレベーターの前で待っていた彩音が二人を呼ぶ。慌てて二人と一匹はエレベーターに乗り込むと5人は最上階を目指した。 7階で止まったエレベーターが開くと、そこには壁の取り払われた空間が広がっており、エレベーターの向かい側には重厚な木のデスクが置いてあった。そこには一人の女性が頬笑みを浮かべながら椅子に腰かけていた。 「いらっしゃい。よく来てくれたわね。さぁ座って」 イメージ通り物腰の柔らかいその女性は涼達を高級そうなソファに座らせ、自分も向かい側に座るとゆっくりと口を開いた。
/191ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1057人が本棚に入れています
本棚に追加