失われた力

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「いいか?よく聴け。アストライアはさっき見たいに魔物と呼ばれる者達から市民を守るために存在している。人間が魔法を手に入れてから15年たらずで今まで確認されていなかった異形の奴らが急増したんだ。これは何故だかわかるか?」 「……………魔力が、魔物を引きつけた?」 彩音が質問を目で瑞樹に振ると、瑞樹は一瞬肩が強張ったが、その後に自信なさげにそう呟いた。 「そう、魔法によって人間はさらに繁栄したが、その代償と呼べる者達が現れた。しかしもう人間は魔法を手放すことなんて出来ないだろう。だから市民にばれないように、危害が及ばないように我々がいる」 「でも魔物達の存在が公になるのも時間の問題なんじゃないですか?」 「だから時期を図っているんだよ。最近チュパカブラだのUMAだのってよく聞かないか? メディアも少しづつ敏感になってきている。世間も魔物の存在を少しばかり意識する。そして『UMAや魔物がいてもおかしくないんじゃないか』という風潮が出来たら魔物の存在を公表するらしい。それがお偉いさん方の考えだ」 「なるほど、それなら混乱は最小限に抑えられるってことか」 涼は納得した様子でそう呟く。その隣には相変わらずつまらなそうなセイが自分の尻尾で遊んでいる。
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