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「ちょっと付いて来て」
素っ気なくそう言った瑞樹は涼に拒否権を与えないかのようにすぐさま踵を返すと教室を後にした。
突然の出来事に一瞬放心状態だった涼も、教室を出た瑞樹を見て慌ててその後を追った。
賑わう廊下を無言で歩き続けた二人は全焼した二階へと降りると『立ち入り禁止』の柵を越えると適当な教室へと入ってゆく。
教室の中は真っ黒に燃え尽きており、ここが一体何年何組だったのかも分からない。歩くたびに不穏な音を立てる床を気にしながら涼は瑞樹の後を追って教室へと入る。
「で、何の用だ?いきなりこんなところに呼び出すなんて」
真っ黒の教室の中をキョロキョロと見回していた瑞樹に涼がそう尋ねると、瑞樹は涼の方へ振り向くと少しだけ顔を俯かせてゆっくりと口を開いた。
「あ、あの………昨日と言うか、今までごめんなさい」
「…………………は?」
「私、今までずっとあなたの事を馬鹿にしてきた。そして昨日も魔法が使えないくせにとか言った。その事に関して謝罪がしたいの。…………本当にごめんなさい」
そう言ってあやまる瑞樹の姿は、先程涼を呼びだしたときの強引さなどは微塵も感じられず、誠意を持ってあやまる今の姿はどこかしおらしく見えた。
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