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その後二人はたどたどしい自己紹介や色々な話をしてお互いのことをより理解しようとしていたとき、不意に綾が黙り込んでしまう。
何かを考えているような綾の表情に、涼な何も言うことなくただ待ち続けていると、しばらくの沈黙のうちに綾が覚悟を決めるかのように口を開いた。
「ねぇ、涼は昨日の件…………どうするつもり?」
昨日の件。おおよそ検討のつくその単語にあえて反応することもせず、涼はしばらく黙りこむ。
「正直迷ってる………俺は魔法は使えないし、アストライアに入ったところで何も出来ないかなって」
涼の本心を聞いた綾は何故か深いため息をつきながら肩を落とす。
何かまずいことを言ったのだろうか、と涼は内心少しハラハラしながらも綾に「どうした?」と話しかけた。
「別に…………ただちょっと自信をなくしただけよ」
「……………自信?」
「昨日は完全に足手まといだった私がアストライアに入ろうと思ってて、昨日私を守りながら鬼と戦った涼は『自分には力がないから』って入らないなんて…………ちょっとね」
学校の成績やその他の実績を考えれば綾の方が圧倒的に上だと言うのは涼も分かってはいたが、綾の本当に落胆したその雰囲気にそんな言葉をかけれるはずもなく、慰めの言葉よりも涼はある一つの選択を頭の中で考えていた。
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