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二人がそれぞれ笑い合っているそのとき、校舎に昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴り響いた。
配線すらも焼き切られたのか、二人がいる教室のスピーカーは音を立てず、その代わり窓のなくなった教室に予鈴が風と共に流れ込んできた。
二人は目配せをすると真っ黒に染まった教室を後にした。
教室へ戻る途中に炭で真っ黒になった手の平を丹念に洗い落とす。本当は上履きの靴底も洗ってしまいたかったが、そんな時間もなく、二階から続く炭の足跡が自分達のものとばれないのを祈るだけだった。
靴の底を地面に必死で擦り付けているところで本鈴が鳴ってしまう。
二人は慌てて教室へと飛び入ると、鐘が鳴りやまないうちに素早く席へとついた。
「…………………。よし、全員いるな。授業を始めるぞ」
涼達が戻った教室には彩音がもう授業を始められる形で待機をしていた。
彩音は戻ってきた二人の顔を見て一瞬無言になるが、すぐにいつものようにきびきびと授業を始めた。
「で、何だったんだ?」
真面目に授業に専念していた涼に横から小さな声でそんなことが囁かれる。
確認する必要もないと思ったが、涼は隣へと目をやると、やはりと言うか体を涼側へと乗り出した啓吾が楽しそうな顔をしていた。
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