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「そうか………じゃあ涼。お前の理由も聞かせてくれ」
彩音は綾の決意に対して何かを言おうとはしなかった。
代わりに少しだけ目を優しく細め、「そうか………」と呟くと続けて涼の方へと目を向けた。
(俺の理由………それは)
「初めて、人に必要とされたから………かな?」
「…………………?」
質問に対して疑問形で返してきた涼に彩音は面食らったような顔をしたが、何も言う事はなく、それに続く涼の言葉を待った。
「俺は昔から一度も魔法が使えなくて、そのせいで両親にも見放されて………学校では落ちこぼれで………ずっと一人だった」
慎重に言葉を選ぶように呟かれたその言葉は、涼の今までの人生であり、心の叫びでもあるのだろう。
たどたどしく紡がれる言葉に、彩音は眉をひそめることもなく、真剣に涼の言葉を受け止めていた。
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