レイニーディ

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「コーヒーだけでいいよ」 おはようも言わず、目も合わせようともしないで夫は言った。 ネクタイも絞めず、新聞を脇に抱えて玄関へと向かう。 その後をパタパタと付いていく千乃。 靴を履くときに一旦鞄を預かるが、それでもやはり夫は千乃を見ようとはしない。 玄関ノブに手を掛け、背中を向けたままで。 「──来週、一週間の出張があるから」 閉まると同時に千乃は涙が溢れそうになった。
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