こんにちわ

2/3
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
「やだ」 そういって友紀はいなくなった。 幼稚園のひまわり組に私はいた 牛乳が嫌いなKと多少乱暴だが面白いJと遊んでいたんだろう 飯を食べたら砂場であそびに行く これを日課 仕事のように毎日繰り返す 家では兄と遊び 飯を食べ 寝る 悩みなど一切ない 今自分は幸せかなど考えずただひたすらにたのしんだ 「あいつやだ」 誰かが泣きだした 砂場にだれかがホースで水を流している 砂は黒く固くなり より頑丈なものへと変わっていく 黒く頑丈という点では類似していた ホースを乱暴に振り回すあの人は 私の目には敵に映っていたのか味方に映っていたのか それは今でもわからない 季節が変わりかけた頃 私はホースを振り回していた友紀と友達になっていた 今まで遊んでいた友達とはあまり遊ばなくなっていたが友紀と遊ぶ回数は減ることはなかった 友紀は近所に住むただ一人の同年代の友人だった 幼稚園ではみんなとも遊ぶが 休日はひたすら友紀と外で遊ぶ これはやり甲斐のある仕事だ 知らず知らずのうちに私は転職をしている 何年か経つと私は昇級し 小学生になっていた 出勤出社はいつも一緒 石を交互にけりながら行き ガソリンスタンドから廃タイヤを転がして帰り とにかく毎日がいい いいんだ 翌年 友紀は転属することになった それを知ったときの衝撃は覚えていない ただなんとなく友紀との毎日を大事に 大切に 重要にしようと必死になったことは覚えている 最後に友紀と出勤した朝は覚えていない ただお別れ会でこらえられなくなって つらくなって せつなくなって 自分の力ではどうしようもない出来事に恐怖すら抱いて 泣いてしまったことは覚えている 出社したあと 私は少し友紀と遊んだ 「明日友紀はいないのかな」 「そうじゃない?」 「うん」 「」 「」 「」 「」 「いやだな それ」 小さな土手の土を崩して化石発掘の真似ごとをしている間に 私は涙を堪えて 鼻をすすって 友紀とのこの会話を心に刻み込んだんだろう その日の別れのあいさつをかわすときに 私がバイバイと行って帰路につくと 後ろで やだ と聞こえた気がした その時私は振り向くべきだったのか振り向かぬべきだったのか それは今でも悩んでしまう 「やだ」と聞こえた瞬間 私の顔は液体で溢れた 口をまげ目を歪めて 必死に友紀に悟られないように 自らの足で友紀から遠ざかっていった つらかった
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!