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友紀がいなくなってからは今の記憶と繋がっている気がする
幸せとは何かを考え 無我夢中で自分の理想的なものを欲しがる毎日
どこか納得のいかない日々
そんな記憶しかない
友紀といたあの頃は夢だったのだろうか
そんなくだらないことを考えてしまうほどに あの日々は別格だった
私が過去をほじくり返すのはあの日々だけだろう
友紀と共に嗅いだ夏の草木の匂いなど
あの頃と変わらないものを 私はこよなく愛するようになった
正直 私はもう友紀と会いたくない
友紀がいなくなって 私は性格が歪んでしまったのだろうか
友人と長い付き合いをもつことができなくなってしまった
この状態で友紀と会えば
あの記憶が全て崩れてしまう気がしてならない
かくして私は
現実を逃避するようにあの頃を思い出すのである
私を作ってくれた最大の功労者である親友 友紀を
26年経った
今でも草木の匂いはあの日々を思い出す
社会にでた私の性格はねじまがる一方だ
もうあの頃のように親友とよびあえることもできないのだろう
そんなことを考えながら 今日も私はデスクワークに励む
二度目の大不況にたえながらもなんとかこの小さな会社はもっている
私は大学に入ったあたりよりかはあの日々をほじくらなくなった
それは私があの日々を思い出すのを飽きてしまったからだ
そんなことを考える暇などないほど忙しい日々を送ったなのだろうか
草木の匂いが懐かしい感じはするが友紀のことを彷彿とさせるわけでもない
納得がいった
だが少し違う
結果は同じだが工程が違うのではないのだろうか
そう考えた私は時々 この工程について考察するのだ
ある日 それは突然訪れた
友紀が死んだ
友紀は病院のベッドの上で パソコンを使いひたすら私の名前を検索していたらしい
二ヶ月前に死を宣告されたが安楽死を選ばず 少しでも長く私を捜していたらしい
友紀の娘が私を尋ねてきて 友紀の死を知った
結婚をして子供ももった友紀は幸せだったのだろうか
幸せなのかと考えて暮らしていたのだろうか
友紀にしかわからない疑問を浮かべた時
私自身の疑問がなぜかとけた
私はあの日々より幸せだったのかもしれない
だからあの日々を忘れることができたのかもしれないと
同時に友紀が死んだ悲しみがどっと沸き上がってきた
私は泣きながら納得した
もう友紀は見てない
思い切り泣けるんだ
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