こんにちわ

3/3
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
友紀がいなくなってからは今の記憶と繋がっている気がする 幸せとは何かを考え 無我夢中で自分の理想的なものを欲しがる毎日 どこか納得のいかない日々 そんな記憶しかない 友紀といたあの頃は夢だったのだろうか そんなくだらないことを考えてしまうほどに あの日々は別格だった 私が過去をほじくり返すのはあの日々だけだろう 友紀と共に嗅いだ夏の草木の匂いなど あの頃と変わらないものを 私はこよなく愛するようになった 正直 私はもう友紀と会いたくない 友紀がいなくなって 私は性格が歪んでしまったのだろうか 友人と長い付き合いをもつことができなくなってしまった この状態で友紀と会えば あの記憶が全て崩れてしまう気がしてならない かくして私は 現実を逃避するようにあの頃を思い出すのである 私を作ってくれた最大の功労者である親友 友紀を 26年経った 今でも草木の匂いはあの日々を思い出す 社会にでた私の性格はねじまがる一方だ もうあの頃のように親友とよびあえることもできないのだろう そんなことを考えながら 今日も私はデスクワークに励む 二度目の大不況にたえながらもなんとかこの小さな会社はもっている 私は大学に入ったあたりよりかはあの日々をほじくらなくなった それは私があの日々を思い出すのを飽きてしまったからだ そんなことを考える暇などないほど忙しい日々を送ったなのだろうか 草木の匂いが懐かしい感じはするが友紀のことを彷彿とさせるわけでもない 納得がいった だが少し違う 結果は同じだが工程が違うのではないのだろうか そう考えた私は時々 この工程について考察するのだ ある日 それは突然訪れた 友紀が死んだ 友紀は病院のベッドの上で パソコンを使いひたすら私の名前を検索していたらしい 二ヶ月前に死を宣告されたが安楽死を選ばず 少しでも長く私を捜していたらしい 友紀の娘が私を尋ねてきて 友紀の死を知った 結婚をして子供ももった友紀は幸せだったのだろうか 幸せなのかと考えて暮らしていたのだろうか 友紀にしかわからない疑問を浮かべた時 私自身の疑問がなぜかとけた 私はあの日々より幸せだったのかもしれない だからあの日々を忘れることができたのかもしれないと 同時に友紀が死んだ悲しみがどっと沸き上がってきた 私は泣きながら納得した もう友紀は見てない 思い切り泣けるんだ
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!