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「数百年振りのお風呂。気持ち良かったですか?」 無駄に豪華な装飾が施された部屋。 少年みたいな顔した魔法使いが、小さな体躯には不釣り合いな大きな玉座に座り、私を見ていた。 「久しぶりに誰かと接している事が……怖い、でしょうか」 静かに笑う魔法使い。 その笑顔は優しいモノじゃなかった。 何だか冷たく、なのに愛おしいモノを見ているような。 「大丈夫ですよ。僕以外この廃城には居ません。君達を滅ぼした人間など、いませんから」 スッ、と力が抜けた。 いや、逆に強ばったのだろうか。 『人間』と言う言葉が頭を駆け抜けた瞬間、私は確実に何かに狼狽えて怯えて安心していた。
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